50代男性Aさん。右の腰からお尻にかけて強い違和感。腰痛ベルトを巻いていないと不安とのこと。
「腰痛のような、腰が重いような、ひっかかるような……」と、ご自身でも言葉に表すのが難しい様子。
そこでひとまず「違和感」とすることにしたのです。その違和感が一番強いのは骨盤の右横の部分でした。
仰向けの状態で両膝を立て、そっと左右に倒してみます。
違和感のある右の腰が硬くなり、左に倒しにくいかと思ったら、逆に右に倒しにくくなっていました。
固まっていたのは左腰だったのです。右腰は力が抜けたようにフニャフニャしていました。
特に胆経ライン(下図参照)の通る骨盤の横の部分の状態に、左と右でとても差がありました。
胆のうや肝臓の凝りが現れやすい、右の肋骨ハの字(季肋部)付近も、凝っているのではなく、やはりフニャッとしています。
年末年始からの、普段とは違った食生活により、内臓疲労が胆のうを中心に蓄積され、現れた姿と観られました。
漢方視点からは、春は「肝・胆」の季節。
立春(2017年は2月4日)を境に前後10日くらいの間、肝臓・胆のう疲労は、いつもより現れやすい時期なのです。
凝っていればゆるめればよいのですが、今回のように、すでに力なくゆるみすぎてしまい、フニャフニャな部分はどうしたらよいのでしょう?
こんなときには、2つの方法を順番に行っていきます。
1)右ではなく、左の胆経ラインをゆるめていく。
固まっている左腰を狙って、左の「臨泣」から左胆経ライン全体をゆるめていきます。
左腰がゆるんだ分、右腰に5割ほど、よい意味での張りが戻りました。
2)漢方視点から、「胆(胆のう)」とシーソー関係にある「心(心臓)」を整える。
フニャフニャしたところがあれば、他に必ずカチカチになってバランスをとろうとしているところがあります。
漠然と探すのは大変。そんなときにも、漢方視点がとても役立ちます。
カチカチだったAさんの胸椎5番「心兪(しんゆ)」を整えると、胸椎10番「胆兪(たんゆ)」も連動して整い、右腰にさらに4割、張りが戻りました。
残りが1割ほどになったところで、冒頭の膝倒し動作も、左右同じくらいになりました。
あとは、ご本人の治る力に任せられそうです。
2日後、定期的にいらして下さっている、Aさんの妹さんがご来院。
その際に、「先日は兄がありがとうございました。あれから調子がさらによくなって、あんなに困っていたのにケロッとして、『先生によろしく伝えてね』ですって(笑)」とのこと。
引き続き食べ飲み過ぎ注意ですよ、と伝えて下さいねとお願いしました。
全ての不調を、均整法はかたちや動きに置き換える視点を持っています。
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※本日(2月11日)開催:「身体均整法学園」来年度生募集説明会