
誌面には書ききれなかったことも多くありますので、ここで補足説明をしたいと思います。
【134ページ「歪」写真】いろいろなパターンがあるので、誌面では詳しく述べられませんでしたが、中でも多いのは、左足首の動きが悪くて左のふくらはぎが硬くなり、連動して左腸腰筋も硬くなって左の骨盤を内側に閉じさせ、上半身が骨盤の傾きとのバランスをとるため、逆の右肩が下がり、肋骨も右側が狭くなって、その中にある肝臓をきゅうくつにさせる、というパターンです。
また、暴飲暴食、運動不足、睡眠不足などで肝臓が慢性的に疲れて、体内から右の肋骨をひっぱり、右肩を下げ、そのことで骨盤も歪むということもあり、この両方が影響し合って歪みを作っていきます。
【134ページ下のOK写真】足首の前側(脛から足の甲につながる部分)に、腱が浮き出ているのが見えるでしょうか。これが前脛骨筋の腱(前脛骨筋腱)です。
135ページのストレッチ(1)(2)を行う際に、この腱が浮き出てくるかどうかが、前脛骨筋を正しく使えているかどうかの目安になります。
特にNG写真の2枚目のように、指先に力を入れて反らせてしまうと、前脛骨筋よりも外側にある長指伸筋や長母指伸筋、長・短腓骨筋などを使ってしまうので、足首の動きが少なくなり、歩きの中で、ふくらはぎがきちんと伸び縮みしなくなります。
【134ページ下のNG写真】
かかとからではなく、つま先から突っ込むようにして着地してしまう方もいます(特にハイヒールを履いたときなど)。
またOK写真も、実は着地の最初はかかと一点です。ただしOK写真のように前脛骨筋が使えると、もも裏のハムストリングスや、股関節の腸腰筋も連動するので着地がソフトで、さらに足全体をバネのように活かせます。
NG写真は2枚ともにハムストリングス、腸腰筋を活かせず、その代償で、上の写真では必要以上に指先で地面をひっかけるように進みます。下の写真では必要以上に親指の付け根で地面を押すことになり、外反母趾のベースとなっていきます。
【135ページ「ストレッチ1」】正確に行うと10回くらいで脛がパンパンになります。文中3)に「両親指をつけ」とありますが、がんばってつける必要はありません。自然についてしまう方はそれでよいです。
このエクササイズの目的は、回数を徐々に増やして前脛骨筋の筋力をアップするということではなく、歩きなどの日常動作の中で、今まで正確に動かすための命令が伝わりにくかった、脳と前脛骨筋をつなぐ神経の流れを整備することなので、おおざっぱに回数を多くやるよりも、10回でよいので、正確な動作を意識して下さい。
そうすれば、歩きの中で自動的に前脛骨筋が使われるようになり、常にふくらはぎが快適に伸び縮みするようになりますから、日常動作すべてが肝臓トレーニングにつながる身体に変わっていきます。
左がやりにくい方、曲げにくい方が多いと思います。両足同時に10回行ったら、やりにくい方の足だけ、さらに5回くらい追加して、左右の足首が同じように動かせるようにしていきましょう。それができたら、左右ともに、さらに角度を深く曲げられるようにしていきます。
慣れてきたら通勤電車の座席や職場の椅子に座ったまま、膝を伸ばさないで行ってもOKです。
【135ページ「ストレッチ3」】均整法でL2自動法と呼ばれる、腰椎2番(L2)を整えるための体操です。
文中3)に「さらに上体を起こし」とありますが、写真3番目では上体を前に倒しています。写真の方が正解なので、「上体を無理せず倒せる範囲で前に倒し」として下さい。どちらでも効果はありますが、上体を倒した方がより効果的です。
足首(足関節)の動きはL2と関係が深く、例えば腰痛の方でL2に歪みがあれば、足首を整えただけでL2も整ってしまうことがあります。
よって腰の調子が今ひとつの方は135ページの1〜3の順で行うとよいですし、腰が快調な方は、先に3を行うことで、1、2の準備運動にもなります。
ちなみにストレッチ1、2は、135ページでご紹介させていただきました志水博彦先生(NSCA認定パーソナルトレーナー)が主宰する「動きの達人スクール」で、歩き方を学ぶ際にいちばん基本となる前脛骨筋のエクササイズです(私の施術に取り入れさせていただくようになったきっかけは、こちら2007年6月2日分を御覧下さい)。
これができたあとに、腸腰筋、ハムストリングス、腹横筋、腹斜筋、肩甲骨周りの筋肉etc.へとカリキュラムは進んでいきます。
年配の方が多く参加されており、その中に私もおじゃましています(志水先生、来週、今回の掲載誌お持ちしますのでお待ち下さいね)。
例えば腹横筋のエクササイズで、私が腹横筋だけを使おうと思っても、長年鍛えた腹直筋が先にもりっと盛り上がってしまいます。
先述の脳と筋肉をつなぐ神経が、私の場合はまだ腹横筋よりも腹直筋の方に強くつながっているわけです。私よりずっと年上で運動経験の少ない方のほうが、逆に素直に腹横筋への命令を送れるようになることもよくあります。
これら本来使われるべき筋肉と脳とをうまくつなげられた方々は、ご高齢であっても、今まで膝が痛くてできなかった正座ができるようになったり、杖なしで歩けるようになったりしています。
繰り返しになりますが、歪みは暴飲暴食、運動不足などによる慢性的な内臓疲れからくるものと、子どもの頃に野山や空き地で伸び伸びと駆け回ったりして遊ぶことが少なく、身体本来の使い方を身につける機会を逃し、不自然な動きを長年続けてきた結果、筋肉・骨格に歪みが積み重なってきたものとに大きく分けられます。
身体が本来の快適な動き、例えば日常生活の中でふくらはぎを常に最大限に伸び縮みさせて使えていれば、本誌記事のようなふくらはぎと肝臓とのつながりにより、肝臓に常によい刺激を与えることができ、多少の不規則、不摂生な生活があったとしても、それを問題なく乗り越えることができます。
今回はテーマが肝臓でしたが、他の臓器と筋肉もそれぞれ連動しています。例えばお腹の奥にある腸腰筋を使って歩くことができれば、その周囲に内臓脂肪がつきにくく、今流行りのメタボ予防になります。全身の筋肉を正しく使える=すべての内臓も正しく使えるということなのです。
とりたてて運動もせず、食事に気をつかっているようにもみえないし、酒も飲めばタバコも吸うのに、妙に健康的な人がいます。そういう方は、運よく小さい頃に正しい身体の使い方を身につけて、日常動作の多くがそのまま運動効果を持つようになっている可能性が大きいのです。
まずは前脛骨筋を自由自在にして、小さい頃に学び損なった正しい身体の使い方を学び直しましょう。とはいえ、不摂生に耐え得る身体作りをお勧めするわけではありませんので、念のため。生活習慣を整えることと併用していきましょうね。
施術で肝臓をはじめとして内臓を整えた後、それを維持、向上させるために取り入れているエクササイズを今回はご紹介しました。
その後のエクササイズにも興味を持たれた方はこちら「動きの達人スクール」がある「スポーツ会館」までお問い合わせ下さい。現在、週に一回のペースで開催されています。
まずはトップページに紹介されている「無料セミナー」で、志水先生担当の回に出席してみることをお勧めします。